フジコ・ヘミングの時間
2018年 08月 11日
妹から「フジコ・ヘミングの時間」という映画が良かったと聞いて、
私も見に行って来ました。
上映会場を調べてみると、近くの映画館ではやっていません。
千葉県ではこの時2ヶ所だけ。
電車で1時間以上もかけ、柏のキネマ旬報シアターという小さな映画館まで出かけました。
マイナーな作品だから会場はがらがらかと思いきや、
時間が近づくにつれシニア層のお客さんが続々とやって来て、150席ほどの会場は満席になりました。
この映画の評判ゆえか、この映画館が人気があるからなのかはわかりませんが。
映画はドキュメンタリーです。
ベルリンで生まれ、東京で育ったフジコさん。
子どもの頃の様子は絵日記で紹介されます。
14歳、終戦の翌年の絵日記。
絵日記の絵があまりにも上手。
映画のためにプロが描いたものなのかと思っていたら、
最後、エンドロールに「絵と文:フジコ・ヘミング」と出ました。
どうやら本人が描いたものらしい。
現在はパリ在住で、ベルリン、サンタモニカ、京都、東京にも家を持つフジコさん。
それぞれの家の素敵なインテリアと暮らしぶり、
こだわりのファッションや友人関係、
ネコや犬を愛する温かい一面も描かれています。
80歳を超え、何もかもスローテンポながら友人の助けを借りてちゃんと一人で暮らしています。
ピアノの練習に厳しかった母のこと、幼くして別れたスウェーデン人の父のこと、
強烈な個性の弟、ウルフさんも出てきます。
そして世界を回るコンサートツアー。
マネージャーを置かない主義のフジコさんは
仕事を受けるのも電話とファックスで自分でやっているそうです。
ピアニストの生活の大半を占めるはずの練習の様子はそれほど多くは出てこなかったけれど、
世界を巡るコンサートの様子はたっぷり見られました。
もちろん、全編を彩る音楽はすべてフジコ・ヘミングのピアノ演奏です。
月の光、月光ソナタ、別れの曲、トロイメライ、ショパンピアノ協奏曲1番・・・
圧巻はラ・カンパネラです。
フジコ・ヘミングの演奏はテンポが遅く、私でも弾けそうな感じにさせてくれるのですが、
その情感表現は彼女ならでは。
一音一音が心に響きます。
私には絶対に表現できません。
世界中にあまたいるピアニスト。
その中で名声を得る人は多くはありません。
以前はフジコさんも、自分は天国へ行ってから幸せになるのだと思っていたそうです。
そんな人生を変えたのが、20年ほど前に日本のテレビで放送されたドキュメンタリー、
「フジコ ~あるピアニストの軌跡~」です。
フジコさんは60歳を過ぎていました。
放送は大反響。
あっと言う間に知名度が上がり、
今やコンサートを開けば多くの人が集まる世界的ピアニストの一人になりました。
人生ってわからないものです。
でも、逆境にあっても信念を失わずピアノを続けてきたからこそ、今の人生があるのでしょう。
これまで変わった人だというイメージを持っていたけれど、
この映画を観てフジコ・ヘミングさんもその演奏も好きになりました。
良い映画でした。
特にピアノを弾く人にはたまらない映画です。
キネマ旬報シアターでは名作を次々に上映しているようです。
ファンが多いのもうなずけます。
わが家からは遠いので、よほどのことがなければ行かないでしょうが、
今回ははるばる遠征した甲斐があり、良い映画が見られました。
満足して家路に着きました。
by Nicky-skyblue
| 2018-08-11 13:08
| お出かけ
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